消しゴムはんこ作家・木村明子さん(くま五郎本舗)の連載「木村明子の新・さんぽではんこ」をお届けします。(隔月更新予定)
吹く風に花粉を感じる季節になりましたが皆様いかがお過ごしでしょうか。千葉県を拠点に活動している消しゴムはんこ彫り、木村明子と申します。
「木村明子という人物がどこかに出かけてはんこを彫る」というこの連載、第7回目となる今回は趣向を変え、とにかく歩き続けた時のことを書きます。
2018年1月、私は健康診断中の問診で「おなかがメタボ気味」と言われました。「気味」というところにお医者様の優しさを感じます。
たしかに近頃、ボディにメタボを感じます。特に腰回りです。本当に夢のないお話で恐縮ですが、ある年齢を超えると腰回りにつく肉の質が変わります。やつらは非常に頑固で屈強で「あたしゃ、ちょっとやそっとのことではどかないよ」という強い意志を感じます。
そんなこともあり「運動しなければ」という熱い思いに突き動かされた私は「とにかく歩こう」と決意いたしました。しかしながら私くらい「レベルの高いずぼら」になりますとちょっとやそっとでは歩き始めません。そこに目的をプラスしなければ動かないのです。
というわけで、今回はまず自身を遠く離れた地域に連行し、帰巣本能を利用して無理やり歩かせることにいたしました。さらには「伝説の方向音痴」と呼ばれる者でも迷わないですむよう、とある路線沿いを歩くことにいたしました。これで多少道に迷っても、線路を目印に現状を把握することができます。
さて、ここでまずは下記の「ひとめで分かる説明図」をご覧ください。
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自宅を離れた私は主人と共に地元の駅から電車で出発し、G駅に降り立ちました。ここから自宅まで約10キロの散歩が始まります。
G駅からE駅までは、路線が地下にあるので主人に付き添ってもらいました。「誰かと共にいる」という安心感は本当にありがたいものです。
E駅を過ぎると路線が地上に現れるのですが、E~D駅間には大きな橋があります。この橋がそれはそれは長く、冷たい風がぴーぷーとふいているのでこの区間は電車に乗りました。電車の中で他に用事がある主人と別れ、ここからはひとり散歩です。
D駅に降り立ちますと、ひとりである心細さもありとても寒く感じました。気温を確認しますと7度です。この辺りではかなり低い気温です。
D駅から歩きだす際、一番警戒したことは「正反対の方向に歩き出す」ことです。方向音痴の者にとっては非常に可能性の高いできごとです。厳重に方向を確認してから自宅に向けて歩き始めました。
D~C駅区間は、距離はありましたがとても歩きやすかったです。高架橋のすぐ脇に道が通っているので、その道を外れなければ迷うことはありません。
C~B駅区間では、高架橋の下に建物が多くなってきて、道が度々高架橋から外れるようになりました。方向音痴としては、高架橋が見える道を確実に探し出さなければなりません。「高架橋がなければ路頭に迷う」ぐらいの思いだったので私も必死です。
この区間後半ではさらに大きな問題が起こりました。あるとは思っていなかった「大きな橋」が目の前に現れたのです。
この時点で恐らく7キロほど歩いております。気力体力は減退する一方です。ただ、幸いなことにこの辺りは地元にも近くそれなりに土地勘もあります。「逆になぜ橋があることを忘れていたのか」と自身に突っ込みを入れながら、なんとか橋を渡る切ることができました。
橋を渡り終えればあとは自宅を目指すのみです。自身の帰巣本能を信じ、ただただ歩き続けました。
家にたどり着く直前、大好物のあんぱん(こしあん)を買いました。普段はソファにだらしなく座りながらぼんやりと食べるあんぱんですが、この日は背筋を伸ばし、一口ずつ大切に食べました。口の中に広がる香ばしいパンとどこまでも甘く滑らかなあんこの風味は「家にいられる幸せ」を伴った「安心安全の味」でした。
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スマホのアプリによりますとこの日歩いた距離は9.4キロ、かかった時間は2時間21分、消費したカロリーは400キロを越えたとのことです。皆様もぜひ一度「帰巣本能を利用した逃げようのない散歩」をしてみてはいかがでしょうか。
ではまた!!
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