消しゴムはんこ作家・木村明子さん(くま五郎本舗)の連載「木村明子の新・さんぽではんこ」をお届けします。(隔月更新予定)
雨が多い季節となりましたが皆様いかがお過ごしでしょうか。千葉県を拠点に活動している消しゴムはんこ彫り、木村明子と申します。
「木村明子という人物がどこかに出かけてはんこを彫る」というこの連載、第3回目となる今回は友人数名と一緒に都電荒川線沿いの散歩をしてまいりました。
都電荒川線は、三ノ輪橋駅と早稲田駅を結んで運行しております。まずは三ノ輪橋駅に行く前に、近くの商店街をぶらぶらしました。この日は気持ちのいい天候だったので、「それぞれお昼ごはんを購入してどこかのベンチで食べよう」ということになりました。
商店街には、昔ながらの風情のあるお店と最近建てられたオシャレなお店が同じように並んでいます。友人たちの間では老舗のパン屋さんが人気でした。私は和菓子屋さんで茶飯おにぎりを買いました。なぜなら、「適当」「無責任」が売りながらもいつもダンディな某役者さんが、某お散歩番組でこちらの茶飯おにぎりを食べたと伺ったからです。後に食べた茶飯おにぎりは調度いい味加減で、お米が一粒一粒ふっくらしていて、しっかりと握られているのに口の中でほろりと崩れる、それはそれは美味しいおにぎりでした。
商店街を離れ、三ノ輪橋駅から車内に乗り込む際に運転士の方から1日乗車券(400円)を購入しました。これで途中下車もばっちりです。車窓を流れる景色を楽しんでから下車し、とある遊園地に向かいました。1日乗車券で入場できるそこは、平日であるこの日も親子連れの皆さんでいっぱいでした。
こちらの遊園地には動物広場があります。広場の入口近くに見事な大きさのクジャクがいるオリがありました。「羽を広げてくれないかしらね~」などと言いながら見守っておりましたがどうもその気がなさそうだったので、早々に別のオリに移動しました。
推定年齢1歳でサービス精神旺盛な牛のつぶらな瞳を見つめたり、ポニーの男子たち(2匹)をながめたりしていると、ふれあい広場が目に入りました。中には羊やヤギがいて、親子連れの皆様とにぎやかに触れ合っておりました。その様子を私たち大人オンリー組は外から見守っておりました。ふいに入口の方から華やかな気配がしたので目をやると、さきほど別のオリで見た大きなクジャクがなぜかそこに現れ、堂々とした足取りで長い羽を上下に揺らしながらふれあい広場を進んできております。
「なぜここにクジャクが」とざわつく現場をよそに、クジャクは「キエーーー!!」と一声鳴いたと思うと「バッサーーー」と羽を開きました。もう現場は大混乱です。たくさんの大人たちがカメラを向け、子供たちは驚きまたは喜び、羊とヤギはびっくりするくらい無関心でした。
このクジャクはとても「プロ」っぽい感じで、まずは広場内にいるお客様に向けて存分にポーズを取り、適度に鳴き、存分なシャッターチャンスを与え、後に広場外で待つ私たちの方にも振り返ってくれました。おかげで私たちは貴重なクジャクの裏側と表側の写真を存分に撮ることができました。本当にありがたいお話です。
後に飼育員さんにお聞きしたところ、このプロのクジャク氏は時々ふれあい広場に連れて来られることになっているそうです。
遊園地をたっぷり楽しんだ私たちは再び都電荒川線に舞い戻りました。途中1度下車して少し早いアジサイを観るなど1日乗車券をたっぷり利用しながら、最後に「とげぬき地蔵尊」に向かいました。「おばあちゃんの原宿」として有名であるこちらには、平日だったからでしょうか、おばあちゃんもおじいちゃんも、若者すらも少なめで、ゆったりとした気持ちで参拝することができました。
この辺りで基礎体力のない私のHPが限りなくゼロに近づいたので、近くにあったカフェで休憩しました。そのカフェに入る寸前、道を挟んだ向かい側にこけしの羅列を観たような気がうっすらしておりました。
休憩後、かなり意識がはっきりした状態でカフェを出ると、やはりそこにはこけしが羅列しております。こけしの側にいた案内係の方に許可を得てひと通り写真を撮ってから中に入りますと、中にもたくさんのこけしや仏像が並んでいます。
こけしをひとつずつ見てみると、顔が丸いもの、大きいもの、そもそも顔しかないもの、柄がないもの、単色のもの、カラフルなものと、作者の方の思いのままに作られており、その個性がとても素敵で愛しく感じられます。みんな違ってみんなよく、「こけしは自由だ」としみじみと思いました。この先、私も自由に私らしいこけしの消しゴムはんこをたくさん彫っていきたいなぁと思いました。
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色々とお話を聞いている中、壁に貼られていた文書に目がいきました。そこには「こけしは子を消すというところから派生したという人も一部におりますが、まったくの俗説に他なりません」と書いてありました。
まったくその通りの認識を持っていた私が「え、違ったの!?」と驚いていたところ、係の方が「そうなんです、この事実を私たちは声を大にして伝えていきたいのです」とおっしゃいました。ですから私もこけし好きのひとりとして、これからこの事実を声を大にして伝えていこうと心に決めました。
こけしとは元々、木製品を作る時に出た余り木を加工して子供たちのために作られたおもちゃだったそうです。
たくさんのこけしと触れ合った後、私たちは都電荒川線に戻って帰宅の途に着きました。この日最後に乗った荒川線の車窓から見えた線路は、夕日に照らされてきらきらと輝いておりました。
今回の散歩は、都電荒川線を中心にたくさんの「素敵なものたち」と触れ合うことができました。6時間くらい歩きまわったのに疲れよりも清々しさが勝る散歩となりました。またいつか、都電荒川線に乗って気楽な途中下車を楽しみたいと思います。
ではまた!!
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