第4回品評会金賞受賞「まつむらまきのこさん」インタビュー 後編
消しゴムはんこファンの皆様、ごきげんいかがですか?
この度、昨年12月9日に開催された「第4回国際イレイサースタンプ品評会」において最高金賞および金賞を受賞された作家の皆様にインタビューを敢行いたしました。作品の制作秘話や独自のテクニック、そして普段の作家活動等について等、普段はお聞きすることができないような内容の濃いお話をたくさんお伺いすることができましたので、詳細を余すことなく皆様にお伝えしたいと思います。
今回は4月4日に公開しました前編に続き「まつむらまきのこさん」のインタビュー後編をお届けします。
前編はこちら
(前編からの続き)
- 続きまして今回のエントリー作品についてお伺いします。今回のエントリー作品ですが、デザインのアイデアと図案の作成から作品の完成までどのくらいかかりましたか?
まつむらまきのこさん:
デザインを思いついてから絵を仕上げるまでは2日ほどでした。彫るのは1週間、ちょこちょこパーツごとに少しずつ仕上げていきました。
- これほどの作品としてはかなり早い仕上がりだったんですね。ちなみにデザイン画の消しゴムへの転写はどのような方法で行いましたか?
まつむらまきのこさん:
細かいところがたくさんありましたので、トレーシングペーパーに手描きで転写しました。
- オーソドックスで確実な方法ですね。次に、今回制作に使用した道具を教えていただけますか?
まつむらまきのこさん:
主にオルファアートナイフプロです。余白は印刀曲、三木章鎌倉曲3ミリを使用しました。
- では、彫る道具以外で「これがなければダメ」的な道具類はありますか?
まつむらまきのこさん:
年齢に逆らえず老眼がきていますので(笑)、卓上ルーペとスタンドライトを使用しています。
- こればかりはどうしようもないですよね(笑)。私も老眼鏡が手放せなくなりました。ちなみに今回作品に使用した消しゴムの銘柄は何でしょうか?
まつむらまきのこさん:
今回は細かいデザインだった為に「ほるナビ 固めブラック」を使いました。
- 私の記憶で恐縮ですが、まつむらさんは第2回・第3回のエントリー作品は「はんけしくん」を使用されていたと思います。今回は今お話しいただいた「黒いほるなび」で制作されたそうですが、消しゴムを変更された大きな理由というのは何でしょうか?
- 細やかな線もしっかりと表現したかったので「固めブラック」を使用しました。
- なるほど、デザインと表現するスタイルに合わせた選択なんですね。では、普段作品を制作する際に使用する消しゴムの銘柄は何でしょうか?
まつむらまきのこさん:
普段作品を制作する時は、オーダーいただいたはんこは「ほるナビ 固めブラック」で、出展などの作品は普通の「ほるナビ」を使用することが多いです。
- 細やかに使い分けていらっしゃるんですね。
- 次にまつむらさんが良く行っている消しゴムはんこの彫り方についてお伺いします。普段はどのような彫り方をされていますか?状況によって彫り方を変える場合があれば併せて教えていただきたいのですが。
まつむらまきのこさん:
色々試してはみましたが、作品が小さくても大きくても「手持ちで手前から奥に刃を進める」のが私には合っているようです。
- ありがとうございます、「手持ち・押し彫り」なんですね。ところで、今回のエントリー作品では少なめですが、松村さんの作品といえば余白の仕上げが非常に丁寧で美しいという印象があります。あれほどまで滑らかに仕上げるのは何か特殊な道具や技法を使っているのでしょうか?よろしければご紹介できる範囲で教えていただきたいのですが。
まつむらまきのこさん:
ありがとうございます。はじめに、はんこは捺すだけではなく飾って眺めることでも楽しんでもらえるように・・・という私なりの想いがあるので、印影はもちろんですが印面にも気を配ります。
余白に関しては まず丸刀で大まかに落とし、次に印曲刀で滑らかに、鎌倉曲でさらに滑らかにします。
- かなり手間をかけていることは想像していましたが、三種類の彫刻刀を使用して滑らかに仕上げていらっしゃるんですね。教えていただきありがとうございます。続きまして、今回の作品の印影に使用したインクの銘柄を教えていただけますか?
まつむらまきのこさん:
夜空の部分はバーサマジック、その他の所はシャチハタのブラックを使用しました。
- ありがとうございます。それと、印影に施された夜空のグラデーションがとても印象的ですが、この部分の表現方法はどのような手法で?
まつむらまきのこさん:
夜空の部分は本当に感覚で(笑)、薄い明るいエメラルドグリーンから夜空の深さが広がって行く感じをイメージしました。
- 感覚だけであの仕上がりですか!個人的には深みを感じるとても好きな仕上げです。それともうひとつ、印面に関しては夜空の部分以外はあえて着色せず「ほるナビ」の2層構造のグレーの部分をそのまま利用されているようにお見受けしましたが、それはなぜですか?
まつむらまきのこさん:
単純に夜空の部分は綺麗な色が残ったのでそのままにし、他の印面は当初黒く染めようとしていましたが、試してみると地が黒いので印影がわかりにくくなりましたので、インクを落としグレーのまま提出しました。
- そういう理由だったんですね。とはいえ、今回のエントリー作品の場合は、無着色だったことがむしろ良い方向に向かったように思います。
- 続きまして、まつむらさんの消しゴムはんこ作家ならびにハンドメイド作家としての現在の活動状況について教えていただけますか?
まつむらまきのこさん:
作家としましては「はんこ工房きのこのこども」の屋号でイベント出展などさせていただいています。あとはオーダー制作を承ったり自分の彫りたい作品を彫ったりしております。
また、JESCA公認講師の資格も頂いており、現在はJEUGIAカルチャーセンター松井山手様にて毎月第四木曜日に消しゴムはんこ教室を開講させていただいております。
- ありがとうございます。とてもアクティブに活動されていますね。それから、情報発信をされているSNSアカウントをお持ちでしたら教えていただけますか?
まつむらまきのこさん:
FacebookとInstagramのアカウントがあります。URLはこちらです。
◆Facebookページ:https://m.facebook.com/makinoco.kinoco
◆Instagram:https://www.instagram.com/makinoco_kinoco/
- ありがとうございます。次に、イベント出展等も含めた今後の活動予定などをお話しいただけますか?
まつむらまきのこさん:
イベント出展は6月2日(日)開催の「東京アートクラフトフェスタvol.1」に「はんこ工房 きのこのこども makinoco」名義で出展します。
教室は先ほどもお話に出てきましたが、毎月第四木曜日13時~15時の枠でJEUGIAカルチャーセンター松井山手様で消しゴムはんこ教室を開講させていただいております。経験の有無は問いませんので、ご興味のある方はぜひ参加してみてください。
- ありがとうございます。まつむらさんはアートクラフトフェスタの前身、というか初開催の「淀屋橋けしごむはんこヴィレッジ」にご出展いただきましたよね。今回は東京での出展ということで私もとても楽しみにしております。続いて、まつむらさんが作家として目指すところや目標となることについてお聞かせいただけますか?
まつむらまきのこさん:
消しゴムはんこ作家として活動させてもらってから、「本当に自分はどこに進みたいのか」ということでたくさん悩んできました。そして今、やっと自分の進みたい道が見えてきたところです。私にしか彫れない作品、それを見れば私が彫ったとわかっていただける作品を彫って行きたいと思っております。
日常に身近な消しゴムはんこですが、私はひとつのアート作品だと感じております。「一枚のゴム版から自由に世界を生み出せる」・・・私だけの世界が広がればいいなと思っております。
- 素晴らしいですね!今回のエントリー作品のテーマにも繋がる、目指すべきものが見えてきたからこそ「前進あるのみ」というまつむらさんの気持ちは、多くの作家の心に「響く」のではないでしょうか。では最後になりますが、ズバリ目標とされている作家の方はいらっしゃいますか?
まつむらまきのこさん:
目標というか、私が消しゴムはんこを始めるきっかけになったのが津久井智子先生の本です。一度作品展で津久井さんご本人にお会いしたことがあるのですが、ふんわりした暖かい雰囲気をお持ちで、「私もいつかこんな風に皆さんに愛される作家になりたい」と願っております。
- ありがとうございます。ご自身の目標がしっかりしていてブレていないところが本当に素晴らしいですね。今後のさらなるご活躍がとても楽しみです。本日はありがとうございました。そして、二度目の金賞受賞、本当におめでとうございます。
まつむらまきのこさん:
こちらこそありがとうございました。
まつむらまきのこさんの詳細な情報はこちら
Facebook:https://m.facebook.com/makinoco.kinoco
Instagram:https://www.instagram.com/makinoco_kinoco/
消しゴムはんこの彫りの美しさとデザインを競うコンテスト「国際イレイサースタンプ品評会」
6月2日開催の第5回品評会で最高金賞に輝くのは果たして誰なのか?
どうぞご期待ください!
https://www.artcraftfesta.com/contest
(国際イレイサースタンプ品評会開催委員長 中鉢久夫 / 2019年4月6日配信)