第6回品評会受賞者インタビュー 【はんこ屋HANABIさん】

 消しゴムはんこファンの皆様、ごきげんいかがでしょうか。

 昨年12月に開催された「第6回国際イレイサースタンプ品評会」において、最高金賞ならびに金賞を受賞されました作家の皆様に、受賞の喜びなどをお伺いしてお届けしている「受賞者インタビュー」を今回も実施いたしました。

 今回皆様にご紹介するのは、初エントリーで見事金賞に輝きました「はんこ屋HANABIさん」のインタビューです。


第6回国際イレイサースタンプ品評会
金賞 はんこ屋HANABIさん


― 初エントリーでの金賞受賞おめでとうございます。はじめに、受賞されたお気持ちを教えていただけますか?

はんこ屋HANABIさん:
 ありがとうございます。もちろん、応募したからには最高金賞をいただけるような作品を作る、という覚悟を持って作りましたし、普段の自分の力の10倍は使った作品になりましたが、いざ出品してみて、やはり不安になりました。本当に力を出し切れたのか、メッセージが難解ではなかったのか、と思いましたし、何より他の方のレベルに圧倒されました。だから、5位の金賞をいただけた時は「届いた」という想いもあり、本当に嬉しかったです。

― おっしゃるとおり、作品に込めた「想い」がしっかり伝わったことが結果に結びついたのだと私も感じています。では、早速ですが今回の作品について、このテーマを選んだ理由を教えていただけますか?

はんこ屋HANABIさん:
 私が普段持つ、自然が壊れていくことへの恐怖や、自然に対する畏敬の念を伝えたくて選びました。それと、動物が好きなので(笑)

― なるほど(笑)。その「自然が壊れていくことへの恐怖や畏敬の念」というのは、例えばどのような・・・?

はんこ屋HANABIさん:
 私は普段、兵庫と大阪の境にある山上のお寺で仕事をしています。関西では珍しい天然記念物の美しいブナ林があり、今地球温暖化の影響や鹿の食害で、人の手が入らないと存続が厳しい状態にまでなっています。その反面、まだまだ珍しい植物や昆虫が生きているのを間近で見ることができ、関心が尽きません。

― そうでしたか。そういった普段の生活や環境に根差した事象がデザインに反映されているんですね。

はんこ屋HANABIさん:
 はい。ちなみに、作品中央、ウサギのそばにあるササユリは、ブナ林で見つけたものです。鹿の食害に遭い壊滅的でしたが、鹿除けの柵の中で復活していたものをがあり、それが嬉しくて主役の一つにしました。
 私は言葉をあまり得意としませんし、議論も好みません。日頃感じている私の中の想いや風景をこの機会に伝えたいと思いました。かなり詰め込みすぎた感もありましたが、何か伝わっていたらいいな、と思います。

― なるほど。個人的には決して詰め込み過ぎているとは思いませんでしたし、作品に盛り込んだもの全てが一貫したテーマを持っていたことで、作品をご覧いただいた皆様に想いが伝わりやすかったのではないか・・・と感じています。ちなみに今回のデザイン画は細部まで非常にしっかりと描き込まれていますが、デザイン画の完成までどのくらい時間がかかりましたか?

はんこ屋HANABIさん:
 実はデザイン画は頭の中にあるイメージを勢いで描いたので、時間はそんなにかかっていません。後で行ったこととしては、描いたモチーフを実在する植物に差し替えたり等の作業を細かくしていきました。あくまで私の印象を優先して伝えるために、敢えて実際には存在しない「炎の花」や「大きなタンポポの綿毛」をあたかも植物のように紛れ込ませて”神秘的な森”のイメージに仕上げました。階段のように木に付いているのは実は、ツキヨタケという夜に緑に光るキノコです。これもブナ林の中で撮影した写真を見せていただき、感動して作品に描きました。

― なるほど・・・今お話をお伺いして作品を見返すことで、リアルとファンタジーの融合が作品をさらに魅力的にしている・・・ということに気付きました。作品全体のバランスが絶妙なので全く意識していませんでしたが、これは素晴らしいセンスだと思います。ところで、作品印面の一部がくり抜かれていますが、これには理由や意図があるのでしょうか?

はんこ屋HANABIさん:
 以前からずっとレリーフ調のくり抜きのはんこはやりたかったのですが、小さな作品が多くて実現できなかったので、いい機会だと思って(笑)

― たしかに小さな作品でのくり抜きは無理がありますよね(笑)。それとひとつ気になっていたのが図案から消しゴムへ転写する方法です。今回はどのように行いましたか?これだけ繊細な図案の転写をどのように行ったのかとても興味があります。

はんこ屋HANABIさん:
 普通に、トレーシングペーパーです。

― おぉ!そうだったんですか!

はんこ屋HANABIさん:
 はい。細かすぎて神経をすり減らしたので、もう二度と作りたくないです(笑)

― そのお気持ち、とてもよくわかります(笑)。続きまして、作品の制作過程についてお伺いします。ズバリ、エントリー作品の完成までどのくらい時間がかかりましたか?

はんこ屋HANABIさん:
 半年間をフルに使いました。例えば、木の皮やうろ(木の幹に空いた穴)の表現では6時間くらいかかっていると思いますし、端っこの木の枝と葉っぱ、木の実のある部分だけでも4時間は軽くかかっています。

― やはりそうでしたか。実際に作品を拝見した際に細部の作り込みがとても丁寧だったのが強く印象に残っていて、「これは相当時間をかけて制作されたのでは・・・」と思っておりました。ですが、長時間の制作作業を半年間続けるとなると、身体や精神面での負荷がものすごいのではないかと思います。その点についてはいかがでしょうか?

はんこ屋HANABIさん:
 けっこう大変でした(笑)。私からも皆様にお伺いしたいのですが、作品制作中に肩こりと目の疲れは皆様感じていらっしゃることかと思います。そこで、皆様がどんな対策をされているか、ぜひ知りたいので教えてくださいね(笑)

― 消しゴムはんこ作家のあるあるですね(笑)。今度「消しゴムはんこ作家のための疲労防止対策」のような特集を組んで、皆様が行っている様々な対策を取り上げてみるのも良いかもしれませんね。検討してみます。


― 続きましてエントリー作品の印影についてお伺いします。印面デザインの雰囲気にマッチした非常に丁寧な着色がなされている印象を受けるとともに、「これって夜なのかな?」というイメージを個人的に持ったのですが、実際には昼夜どちらをイメージして着色されたのでしょうか?

はんこ屋HANABIさん:
 イメージとしては夜から日が昇るまでの時間帯ですが、物語としては、常に緑色に光る、人が足を踏み入れられない妖精の森のイメージです。

― 神秘性のあるイメージですね。それから、はんこ屋HANABIさんのインスタグラムで着色されていない印影も公開されていましたが、着色されたものとはまた違うプレーンで絵本の挿絵っぽい雰囲気が個人的に非常に気に入りました。そこでお伺いしますが、今回は作品の制作段階で印影に着色することを想定していたのでしょうか?それとも、できあがった印影を見て着色することにしたのでしょうか?

はんこ屋HANABIさん:
 制作後に決めました。主に、きのこの階段が黄緑色に光っている様子を伝えたかったからです。ポイントだけ塗る予定が、塗っていたら夢中になって、気づけばやりすぎたかな?と反省するまでになっていました(笑)。結果的に、たくさんの方に評価いただけたのでよかったかな・・・と思います。

― 個人的には世界観がしっかりと表現できていますし、むしろこのくらいがちょうど良いのではないかと思いましたよ(笑)。それでは最後に、今後消しゴムはんこ制作家または愛好家として、どのような活動をしてみたいか教えていただけますか?

はんこ屋HANABIさん:
 多色押しも面白そうだなとは思いますが、基本的にはどのくらい細かくて美しい作品が作れるか、ということに関心が強いです。私の中のイメージをよりわかりやすく伝えるツールとしても極めていきたいですね。昔から小説や児童文学が好きでしたが、自分で書くというのは断念したので、そういう物語も作品に込めていきたいです。

― ありがとうございます。はんこ屋HANABIさんの気持ちの中で既に明確なビジョンをお持ちですので、どのような作品が生まれるのかとても楽しみですね。今後の展開とご活躍を期待しております。本日はありがとうございました。そして金賞受賞本当におめでとうございました。

はんこ屋HANABIさん:
 ありがとうございました!


はんこ屋HANABIさんのインスタグラムはこちらです

https://www.instagram.com/hankoyahanabi/


第7回国際イレイサースタンプ品評会は2020年11月15日開催!
あなたも金賞を目指してみませんか?
詳しくは「国際イレイサースタンプ品評会」公式サイトをご覧ください

https://www.artcraftfesta.com/contest


(国際イレイサースタンプ品評会開催委員長 中鉢久夫 / 2020年4月10日配信)

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