川治伴江さんロングインタビュー【前編】

 2018年3月31日より福井県坂井市の「一筆啓上 日本一短い手紙の館」にて、【川治伴江 革命-Creation brings about a revolution 消しゴムはんこ魅了の新世界】のタイトルで初の個展を開催中のイレイサースタンプアーティスト、川治伴江さん。
 この度、多忙の合間に貴重な時間をいただくことにより、初のロングインタビューを実現することができました。今回は【前編】として、個展開催への想いや独自のスタイルについてのお話をお届けいたします。


~初の個展開催~

― 川治さんはこの度、初の個展を開催することとなりました。本当におめでとうございます。

川治伴江さん:
 ありがとうございます。公益財団法人丸岡文化財団からご依頼があり、【川治伴江 革命-Creation brings about a revolution 消しゴムはんこ魅了の新世界】のタイトルで初めての作品展を開催する運びとなりました。

― 「夢がかなった」というところでしょうか。

川治伴江さん:
 ずっと「いつか開催できればいいな」とは漠然と考えていたのですが、まさかこのような大きな規模で開催することになるとは考えもしませんでした。本当に嬉しい限りです。

― 会場と開催スケジュールを教えていただけますか?

川治伴江さん:
 福井県坂井市の「一筆啓上 日本一短い手紙の館」で、2018年3月31日から2018年5月6日まで開催します。そして、4月8日(日)、14日(土)、22日(日)は、消しゴムはんこを使ったワークショップの開催も行います。それぞれ別の内容で行いますので、ぜひ体験にいらしていただければと思います。

― 3日間とも内容を変えてワークショップを開催するというのは、ご来場のお客様にも楽しみとなりますね。では、展示作品についてお聞かせいただけますか。

川治伴江さん:
 はい。これまで制作した作品はもちろんですが、今回の個展のために新作を制作して展示しています。全ての作品において、「自分らしさ」をよく表現できた作品になったと思います。

― これまで川治さんがこれまでコンテストに応募して受賞された作品も展示されているのでしょうか?

川治伴江さん:
 はい(笑)。実際に作品をご覧いただいた方に「これ消しゴム?こんなにすごいことができるんだね」とおっしゃっていただくことがとても多く、私としてもとても嬉しい限りです。消しゴムはんこに対するイメージが大きく変わると思いますので、ぜひ会場にお越しいただいてご覧いただければと思います。

― それは楽しみですね。話は変わりますが、川治さんのいう「自分らしさ」はご自身の作品のどのような部分に表れていると考えていますか?

川治伴江さん:
 そうですね・・・作品そのものに出ているのはもちろんですが、作品に使用するインクの色が最も自分らしさが出ている点だと思います。黒やメタリック系カラーをベースにして多くの色を重ねることが多いんですが、それが私らしい作品の雰囲気になっているように思いますね。

― そのあたりに川治さん独自の表現やテクニックの秘密がありそうですね。

川治伴江さん:
 レッスンのネタばらし的な内容になってしまうのであまり多くをお話しすることはできないのですが、いろいろ秘密があるのは事実ですね。

― では、レッスンに参加することで全貌がわかる・・・ということですね(笑)。

川治伴江さん:
 そうですね(笑)。特にプレミアムレッスンにおいてそのあたりのテクニックを詳しくご紹介することが多いので、ご興味のある方は機会があればぜひレッスンを受講していただければと思います。


~オンリーワンとスキルアップの重要性~

― 川治さんは「イレイサーミクストメディア」というこれまでになかったジャンルを確立して活躍してきた第一人者ですが、ご自身のスタイルを確立した当時からこれまでの間に表現方法や制作方法等に何か変化はありましたか?

川治伴江さん:
 自分自身では、作風や制作過程があまり変化したとか意識してはいないですし気にしたこともないのですが、その時々と作品によって作り方や手法はそれぞれ違いますね。ですが、たとえ話になるのですが過去の作品を現在制作しても全く異なるものになるとは思います。そういった、その時・その作品でしか表現できない「オンリーワン」というのはとても大切にしています。

― それは、アート作品として「全く同じものはふたつ制作することができない」ということでしょうか?

川治伴江さん:
 まさにそのとおりです。作品というのは、過去であれ現在であれ「その時の自分自身にしか作れないもの」という認識を持っていますので、今おっしゃったように例えば過去の作品を今同じように製作しても全く同じものにはならないと考えていますし、仮にほとんど同じ作品が完成したとしても、その作品には最初の作品を制作した際の緊張感や感情などを込めることは絶対に無理だと思っています。

― なるほど。では、先ほどお話の中に出てきた「オンリーワン」を大切にしているという点についても、何か具体的な事例などがあればお話しいただきたいのですが。

川治伴江さん:
 そうですね・・・私が東京の「ツキネコスタンプ倶楽部」を会場にして不定期に開催しているプレミアムレッスン等、スキルアップを主な目的としたレッスンで毎回実践していることなんですが、私自身が制作した作例を展示してご覧いただく際に、参加された皆さんには「私の作品はサンプルなので絶対に真似をしないように」と断りを入れるようにしています。

― それはなぜでしょう?

川治伴江さん:
 私が制作した作例と同じものを作るためにレッスンに参加していただいたわけではないですしね(笑)。私としては、参加した作家さんそれぞれの持ち味を存分に出していただいて、そこに私の作例からヒントを得て自分が持つ制作技術に新しいテクニックをプラスして「引き出し」を増やし、表現方法を拡げていただくことができればと考えています。これが、「絶対に真似をしないように」の意味するところなんです。

― つまり、オンリーワンを制作しながら新たなテクニックを習得してスキルアップを目指す、ということですね。

川治伴江さん:
 まさにそのとおりです。作例どおりに作らないことでおのずと独自性が出るんですよ。そしてここがとても大切なんですが、参加された方の作品のいいところを見つけて褒めてあげることで、生徒さんものびのび制作できるようになるんです。「自由に」「勝手に」「好きなように」作っていただけるよう心掛けているんですよ。なので、「こんな感じでいいんですか?」というふうな質問には「自分の好きなようにやっていいんですよ」と回答するようにしています。

― なるほど。ですが、「自由に」「勝手に」「好きなように」というのは、制作の指針となるガイドがないということになりますよね。捉え方によってはとても難しく感じられる方もいらっしゃるのではないでしょうか?

川治伴江さん:
 たしかにそうかもしれませんね。ですが、作品制作のスキルアップを目指すうえで、自分自身の考えに基づいて自由に制作するというのはとても重要なことだと私は考えています。既存の作家さんの作風や制作スタイルを真似ているだけでは作家としていずれ行き詰ってしまいますし、結果がどうあれ自分の思ったように制作することで自分で考えながら制作することに慣れていき、それがいつしか自分の独自の制作スタイルになる・・・これが理想ですね。

― 失敗することを恐れてはいけない、ということですね。

川治伴江さん:
 そうです。失敗することで理解できることもありますし、成功した時の喜びと達成感は何物にも代えがたい貴重な経験と多くのスキルをもたらしてくれますしね。


 後編では、川治さんの制作に対するこだわりや消しゴムはんこへの思いをお伺いしています。近日公開予定ですのでどうぞご期待ください。


川治伴江 革命-Creation brings about a revolution
消しゴムはんこ魅了の新世界

会場:一筆啓上 日本一短い手紙の館
http://www.tegami-museum.jp/
住所:福井県坂井市丸岡町霞町3-10-1
開館時間:9:00~17:00(16:30最終入館)
主催:公益財団法人 丸岡文化財団
後援:坂井市・坂井市教育委員会・北國新聞社・福井新聞社・NHK福井放送局・FBC福井放送・福井テレビ・福井ケーブルテレビ・さかいケーブルテレビ・こしの国ケーブルテレビ・一般社団法人JESCA日本イレイサースタンプ協会・株式会社ツキネコ・ヒノデワシ株式会社・一般社団法人グローバルStamp’nマイスター協会・株式会社井ザワ画房・Cafe Duisit Heren


【川治伴江さんプロフィール】

福井県を拠点に活動するイレイサースタンプアーティスト。テキスタイルデザイナーとしての経験を元に、幾何柄・花柄などのモチーフをはじめ様々なテイストの作品を創作する中で、消しゴムはんこと他の技法を組み合わせて作品を表現する「イレイサーミクストメディア」と呼ばれるジャンルを確立し第一人者として活躍する傍ら、各種商業催事出演、県内外において出張講座、文化センターにて講師活動を行っている。第14回福井県テキスタイルコンクール入選、第65回福井県総合美術展入選、第5回世界平和芸術家協会展優秀作品賞、第4回ホルべイン版画コンクール入選、第9回スタンプカーニバル2015コンテスト日本遊印アート協会賞受賞、第10回モナコ・日本芸術祭2016モナコ公国文化庁芸術創造賞受賞など、入選・受賞歴多数。

川治伴江さんの情報はこちら
http://ameblo.jp/lumcyan2012/
https://www.facebook.com/TomosCollection
https://www.instagram.com/tomoe_kawaji/


(消しゴムはんこライブラリー編集部 / 2018年4月2日配信)

コメントを残す